Yonezawa Fashion Base Camp

ベースキャンプとは、登山のために必要な物資を集積し、挑戦の拠点となる場所のこと。繊維産地として長い歴史を持つ米沢もまた、現代ファッションの創造を支える拠点となるべく、「ヨネザワファッションベースキャンプ」構想が生まれました。織物の街・米沢から、新たな可能性を切り拓き、産地の活性化へとつなげるプロジェクトです。
米沢産地には、職人の技術、多彩な織機、そして挑戦を続ける開発力が集結しています。各企業が連携し、知識やアイデアを掛け合わせることで、これまでにない価値を生み出す力を備えています。ヨネザワファッションベースキャンプでは、国内外のブランドやクリエイターとつながり、ものづくりの新たな可能性に挑戦。その挑戦を支え、発信し続けていきます。
米沢織の歴史

米沢織の歴史は、江戸時代中期、上杉藩主・上杉鷹山が産業振興の一環として織物を奨励したことに始まります。寒冷な気候で農作物の生産が難しい米沢では、藩士の内職として織物産業が発展。のちに、絹織物の技術が取り入れられ、「米沢紬」として広まりました。
戦後の昭和期には、染色技術の進化とともに新たな織機の導入や合成繊維の活用が進み、産地としての規模が拡大。伝統的な着物文化を受け継ぎながらも、いち早く洋装生地の生産に取り組み、独自の織物文化を築き上げました。
現在も、多様な素材や技術を駆使した織物づくりが続き、ファッション業界をはじめ幅広い分野で活用されています。その品質とデザイン性は、国内外のブランドからも高く評価されています。
米沢織りの工程

米沢産地は、撚糸、整経、機織、染色、加工、縫製といった各工程が分業制によって支えられています。
まず、撚糸屋が糸に撚りをかけ、整経工場が縦糸の準備をします。その後、染色工場で糸に色を付け、機屋が生地を織り上げます。織り上がった生地は加工場で風合いや機能性を引き出す仕上げを施し、最後に縫製の工程を経て製品として完成します。
この分業制の強みは、それぞれの工程が専門性を極めることで、品質の安定と向上が図れます。染色では深みのある発色、加工では素材の持ち味を最大限に引き出し、縫製では生地の特性を活かした仕立てを実現します。それぞれの技術が掛け合わさることで、米沢のものづくりは進化を続け、新たな可能性を生み出しています。
染色の歴史

織物は、色と組織の組み合わせによって様々な魅力が生まれます。中でも染色の工程は、単に色をつけるだけでなく、織物に表情を与える重要な工程。繊維の種類や染料、染め方によって発色や風合いが変わり、同じ織りでもまったく異なる印象を生み出します。
日本の繊維産地にとって、加工場は欠かせない存在です。米沢にも加工場があり、それぞれが独自の技術を持ち、織物の価値を高めています。かつて機屋たちが資金を出し合い、加工場を設立したほど、染色や仕上げの工程は産地全体の品質を支える重要な役割を果たしてきました。
米沢織は、染色・織り・加工の技術が融合することで、繊細な色彩や立体感のあるデザインを生み出してきました。伝統を継承しながらも、現代の技術を取り入れ、新たな表現の可能性を追求し続けています。
暮らしの中の米沢織

米沢産地には、和装と洋装という2つの大きなカテゴリーがあり、それぞれ独自の技術を持つ機屋が活躍しています。
和装では、着物地や帯、裂き織り、手織などの技術が受け継がれ、藍染や紅花染めといった伝統技法とともに発展。一方、洋装では、ジャケットやスカートなどのファッション生地から、フォーマルウェア向けの高級生地、スポーツウェア用の機能性素材まで、幅広い織物が生み出されています。
これまで、米沢の洋装生地は国内外のブランドとともに開発され、製品として展開されることが多く、その技術がブランドのものづくりを支えてきました。しかし、私たちは生地そのものの価値を、さらに高めていきたいと考えています。技術力の高さ、色や風合いへのこだわり、そして織物としての完成度──そうした「米沢織だからこそ生まれる魅力」をより多くの人に伝え、新たな可能性を広げる取り組みを続けています。
産地の新しい取り組み

若い世代が、米沢で新たな挑戦を続けています。
2023年にスタートした「360°よねざわオープンファクトリー」では、工場を一般開放し、ものづくりの現場を実際に体験できる機会を提供。見て、触れて、感じることで、地元の人々や米沢織を扱うブランドにとっても、その魅力を再発見する場となっています。
また、新たな素材やデザインに挑む技術者が増え、地域の文化を活かしたテキスタイル開発や、東北芸術工科大学の学生とのコラボレーションも活発に行われています。
米沢ファッションベースキャンプは、こうした新しい動きを支え、発信する拠点。次々と生まれるアイデアが、米沢のものづくりをより面白く、より自由なものへと広げていきます。